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がん最前線 乳房(下) 6割は自分で「発見」 月1回検診を習慣に

 乳がんは、自分で触って見つけられる唯一のがんといわれる。金沢市の山口節枝(せつえ)さん(69)も20年前、風呂上がりにタオルで体を拭いていたところ、右胸のしこりに気付いた。
 「乳がん?いやまさか」。病院を受診したところ、予感は的中した。直径1・2センチの早期だったことから、当時普及し始めていた乳房温存手術を受け、現在も再発することなく過ごしている。山口さんはこの時、早期発見の大切さを身をもって感じたという。
 当時は今のような啓発活動は行われておらず、山口さんも検診は受けていなかった。そこで山口さんは、乳がんの啓発を目的とした市民グループ「BCSG石川」を立ち上げ、活動は今年16年目を迎えた。

●のの字を描く


 活動の一つが、自己検診の方法を書いたオリジナルの「シャワーカード」の配布である。▽鏡の前に立ち、乳房の大きさや形に変化がないかをチェックする▽乳房にせっけんの泡をつけ、手で押さえ気味に、のの字を描くように触れる―などのポイントが書かれ、月1回の自己検診を習慣づけることを呼び掛けている。
 今年は、石川県内全域を対象に、3歳児健診に訪れた母親にカードを配布している。乳がん患者の若年齢化が進み、20~30代から自己検診に関心を持ってもらう狙いがあるという。
 マンモグラフィーによる乳がん検診が普及してきたとはいえ、自己検診で見つかるケースは多い。石川県立中央病院乳腺内分泌外科でも、乳がん患者の約6割が、自分でしこりを見つけて受診してくる。
 直径1㌢程度の小さい乳がんなら、乳房温存手術で取り除き、数日で退院、すぐに社会復帰することができる。進行すればするほど、温存か全摘かや、薬物療法との組み合わせで、さまざまな選択とリスクを考える必要が出てくる。

●子の受験や介護


 乳がん患者が最も増える40代後半から50歳前後の女性は、子どもの受験や親の介護に忙しく、自分のことは後回しになりがちだ。「しこりに気付きながらもお姑(しゅうとめ)さんの介護を優先して受診を先延ばしし、しこりが大きくなった患者も少なくない」と同科の吉野裕司診療部長は話す。
 男性患者もいないわけではないが、同病院で年間160件行われる手術で、男性は1~2件。男性は胸のふくらみがない分、早期発見しやすいという。
 「男性はむしろ、母親や妻、娘など自分の大切な女性が乳がんになるかもしれないことに関心を持って、検診を促すなど、早期発見に協力してほしい」と吉野部長は話した。