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がん最前線

がん最前線 乳房(中) きめ細やかさで先端走る 「チーム医療」でサポート

 がん治療では、患者の負担を減らそうと最先端の治療が導入されてきた。
がん細胞を狙い撃ちし、抗がん剤より副作用が軽く抑えられるとして注目の「分子標的薬」で、2001年に日本で初めて認可されたのも、乳がん治療に使われる「ハーセプチン」だ。
 石川県立中央病院乳腺内分泌外科の吉野裕司診療部長によると、乳がんは、進行度合いを示す「ステージ」だけでなく、がんのタイプによっても治療法が変わる。中でも乳がん患者の2~3割に当てはまる、特殊なタンパク質「HER(ハー)2(ツー)」が陽性のタイプは、早期でも再発、転移が多かった。
 「ハーセプチンは、このたちの悪いタイプの乳がんに効果を発揮し、薬によって治療成績はかなり向上した」と吉野部長は話す。手術前に化学療法
ハーセプチンと抗がん剤を組み合わせることで、治療の選択肢も広がった。吉野部長によると、ハーセプチンがよく効くタイプでは、握り拳大のしこりもみるみる小さくなり、消えてしまうこともある。手術前に化学療法を行うことで、乳房温存につながるケースもあるという。
 胃がんの回でも取り上げた「センチネルリンパ節生検」も、乳がんが切り開いた治療だ。乳がんは、乳房とともに、脇のリンパの手術も行われる。以前は全身への転移を防ぐために脇のリンパを全て取り除いていたが、その場合、腕のむくみや感覚異常などの後遺症が起こりやすかった。
 センチネルは「見張り番」を意味する。脇にある約20個のリンパのうち、転移を「見張る」1~3個を手術中に取って顕微鏡で調べ、転移が確認されなければ、それ以上の切除は行わなくて済むのだ。

●生活の質も大事


 「乳がん患者は40代後半から50歳前後がピークで、その後の人生は長い。だからこそ、がんが治るだけでなく、手術後の生活の質も大切になってくる」と吉野部長は強調する。
 患者の声にきめ細やかに対応するため、「チーム医療」が導入されたのも乳がんが最初といわれる。吉野部長の科でも医師や看護師、薬剤師、理学療法士らが集まって治療法を検討するチームカンファレンスを週に数回行っている。
乳がん治療では、リンパ切除による腕のむくみだけでなく、分子標的薬に伴う肌の荒れで「家事に支障が出る」などと訴える患者もいるという。
 「かつては『しょうがない』の一言で片付けられていた後遺症にも耳を傾け、サポートする体制でも乳がん治療は先端を走っている」と吉野部長は話した。